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炎如交際

キング×(数学+鼻血+保護区域)=世界平和 を提唱(したい)ブログです

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【センチメンタルフィボナッチレスポンス不足のマスター】※にょ健二

すっかり更新していないなーと思い自分の恥フォルダを漁っていてそういえば春コミの無料配布を晒していなかったなと思い至りました GENNKOUSHIRO!!!!

書き下ろしはあと10Pくらい書く感じです明日の夜入稿だって!!!フヒヒ!!!

※佳主馬×にょけんじさん(先天性)なのでご注意ください!!!※
にょけんじさんがひらがな表記なのは完全に私の趣味ですありがとうございます
こう、乱○とら○まみたいな、そんなノリでね!!!


ああああああああああ拍手での励ましありがとうございますぅぅぅぅぅうxがががgんばる…



もうちょい早く産まれたかったとかもし同年代だったらとか数えるのもおっくうになるくらい僕は思っていたんだけどそんなことを思う自分自身のヨウチさとかつまんないプライドとかまるで川底に淀みが堆積するがごとくのきたならしい中二病ファクターで脳みそが気だるくなったりして僕はとてもじゃないけどあなたよりもよんさい離れたこのからだのことがいやで厭でたまらない時期をのたうちまわっていた。んだけどあなたはそんなこと知らなくていいし知られたら僕はトラックの前に飛び出(してもあなたを残して死ぬだなんて滅相もないので僕は死にましぇん)とにかくそんな風なテンションです。
どろどろと
渦巻いているあなたに対する性欲?征服欲?貪欲?なんでもかんでもしっちゃかめっちゃかに腹腔に溜まり腐る浅ましさが段々と僕を男にしてあなたはおんなのこで僕は夏休みを利用して僕のうちに泊まりに来てくれたあなたの背が僕より低くなっていてはだが白くて髪の毛が柔らかそうでひそやかに微笑む唇がえもいわれない可憐なセピア色をしているのに気がついて僕は男だと気がついてあなたが僕を男として認識していないのに傷ついて勝手な傷心だ、僕はまだ責任すら負えない。

【センチメンタルフィボナッチレスポンス不足のマスター】

(なにがどうしてこうなった)
佳主馬はいい加減、アバター任せではなく己の拳に行き場のない怒りを込めて大事なパソコンのディスプレイを破壊寸前である。
佳主馬が屈託そのものみたいな猫背でパソコンに向かっているその傍らで、けんじは真剣な顔で本に没頭している。
けんじだなんて名前をつけられてしまったがけんじは正真正銘の女性で、名付け親は彼女の母で、普通の名前じゃつまらないし男の子の名前をした女の子ってなんだか可愛い気がする男の子みたいな女の子に育ててみたいきっと面白いとかよくわからない理由だ。字面を健二にさせられそうだったところを父親の抵抗のおかげで辛うじてひらがな表記になったのだと、佳主馬は彼女から伝え聞いていたが、ひらがな表記が及ぼした影響はむしろなんだか犬っぽいとかそんな程度だ。佳主馬は時折自分の大仰な名前のせいで「流行ったもんねー、派手な名前」とか馬鹿にせられる側だったが、彼女の名前は常軌を逸して佳主馬の知る限りのDQNネームの最高峰である。
まぁ名前はどうでもいいが、けんじは母親の思惑通り髪型から服からまるで男の子めいている。気弱で内気な性格だが大学生になった今でも言葉遣いも治らずに自分のことを「僕」という。けんじは男女間の区別があやふやだ。ひねくれた育て方をされてしまった環境もあるだろうが、もともとあまり興味がないのかもしれない。彼女はとにかく数学が大好きで男女交際とかおしゃれとかそんなものには見向きもしない。とにかく数学、一も二もなく数学で、佳主馬はそんな彼女に惚れてしまった。数や方程式や幾何学相手に何をどう戦えばいいのかさっぱりわからないまま二年が過ぎた。
十三歳で告白した時に彼女が了承したのはあの頃の自分が少年といういきものだったからだと佳主馬は推測している。
そんな有様だったので、二人のお付き合いは電車で例えるならば一駅二メートルを各駅停車で行くくらいの鈍行車両にのっかっている。だがたとえどれだけゆっくりしていっても進んでいるには違いなかった。手は繋ぐ。軽いキスなら許してくれる。メールのやり取りも互いに誰より頻繁なのも知っている。
が、そこで停滞している。微塵も動く気配がなく、膠着状態に息切れを催した佳主馬は関係を持続することだけを考え始めている。けんじは平穏無事に呼吸している。自分ばかり躍起になってばかばかしくなって、でも関係を解消するくらいなら今ここで死ぬ。
大学生になったけんじは今回の夏休みを利用して佳主馬の住む名古屋に泊まりがけで遊びに来ていた。が、佳主馬に会いに来たというより佳主馬の家族に会いに来たという意味合いが多分に含まれている。けんじが小さいころから彼女の両親はあまり家にはいなかった。一度なんか離婚の危機にまで瀕したらしい。それでけんじは肉親の情に飢えている感が、飄々と天然な面の下に蔓延っている。
けんじのことは池沢家全員がお気に入りだ。けんじは自分の家族に囲まれて楽しそうで嬉しそうだ。佳主馬はぼんやり彼女がほんとうの家族になる日を待ち望んでいて絶対実現してやると覚悟と決意をしているのだがけんじは佳主馬を経由しなくとも池沢家に馴染みまくって養子未満になりかけている。ので、いいことなのだろうけどバリアフリーすぎると母さんあたり本気で養子にとるとか言い出しそうだと、最近けんじと家族との距離の近さを剣呑に感じている佳主馬だ。息子を頼って欲しい。嫁という発想を念頭に置いてくれまいか。
(もしリアル養子とかいう事態になったら僕一生独身だよわかってる母さん)
と、妹を抱いたけんじの頭を撫でまくる聖美を見ながら薄ら寒くなったのは一度だけではない。けんじちゃんかわいい→うちの子になればいいのに、の間に、佳主馬の彼女さん、という概念を挿入するのを忘れられたら困るのだ。
そんなこんなでけんじがうちにくる事、佳主馬と一つ屋根の下な状況に危機感を感じている人間はいなかった。佳主馬ですら悲しいかな少しも浮つけなかった。実際、けんじが名古屋に来て初日には、聖美は妹とけんじを連れて買い物に出かけ佳主馬は留守番の憂き目に遭った。その日の夕食はちくわと枝豆、インゲンにながいもにんじんの搔き揚げが出された。
「てんぷらって、おうちで出来るんですねぇ」
と目を輝かせて言ったけんじを少し潤んだ目で見つめて、
「けんじちゃんがうちの子になってくれたらいくらでも作ってあげるからね」
とか言っている母親に、佳主馬の言葉に出来ない視線は届かないようだった。
食の細いけんじが一生懸命に搔き揚げをむしゃむしゃおいしそうに食べるのを見ればしあわせな気分に浸れたのは事実だが。
妹に絵本を読み聞かせたり、夕食の買出しに付き合ったり、けんじはとても楽しそうだった。おはようおやすみと挨拶を交わせるよろこびに縋る他ないほど佳主馬はけんじを自分の血族に独占されフラストレーションも黙殺されていた。
三日目を迎えて転機は訪れた。母が妹を連れて旧友と遊びに出掛ける日だ。
「前々からの約束だから断れなかったの、ごめんねけんじちゃん」と心底残念そうにしている母のスケジュールを把握していた僕GJ、と内心ガッツポーズを決めたことは内緒だ。
出掛ける直前、聖美は佳主馬に釘を刺していった。
「けんじちゃんに変な気起こすんじゃないよ」
変な気もなにも彼女なんだから、とは思いはしたが、
「分かってるよ。気をつけていってらっしゃい」
と平然言ってのけることが出来たのは、佳主馬もけんじとどうこうなんてありえないとほとんど無意識下で自認していたからだ。感覚の麻痺も少しはあったが、この二年間で染み付いた進展のなさは諦観の温度で佳主馬の神経を浸していた。手を握ってもキスをしてもくりくりした目で嬉しそうににこにこしている無邪気を相手に何かしでかそうものなら地獄に落ちそうだとか付き合っている相手なのに思い込んでいる佳主馬の哀愁漂う認識だ。
(けんじさんはまだ僕のことおとこだとか思っちゃいない)
しかし、いざ二人きりになってしまうと、腹の底からぞっと寒くなった。佳主馬は己の短絡に嫌気がさした。
母の笑い声や妹のはしゃぎ声の潰えた、しんとしたマンションの一室に、ぽつりと二人取り残されて、視線を合わせた途端佳主馬は劣情の底冷えを知った。おぞましいほどの本能が佳主馬の四肢に雷のごとく伝播した。
けんじが自分をおとこだと思っていなくても自分はおとこでけんじは自分が好きな女性なのだと思い知らされ打ちのめされた。
けんじが、自分の部屋で、内股気味の正座でにこにこしている。自分の生活痕に満ち満ちている空間に彼女がいる、それで、彼女の背後には何度か彼女を脳内で辱めた現場であるベッドがあった。背筋を駆け上る悪寒ではない冷たいものは、脳髄に達して一気に熱塊になって佳主馬の日焼けした頬を染め上げた。
細身のジーンズに包まれた脚のやわらかな線だとか、顔にも体型にも似合わない、ふくりとポロシャツを押し上げている豊かな胸のふくらみだとかが、眼前に晒されて、呆然と彼女の表情を窺えば無垢ばかりの笑顔だ。
佳主馬の心情がありありと某動画にでも流れようものなら「童貞乙」弾幕の餌食となるに違いない。が、それでも佳主馬は今までと比べ物にならない衝動に必死で抗っていた。なんで彼女と二人きりで平気でいられると思ったのだろう。
(どうしようけんじさんが好きだ)
(好きなだけじゃなくて今僕はおとこになりたがっていて僕はこのままだと人間として最低な、それこそ、ただのオスに成り下がりそうでこわい)
大体何をしていいのだかわからない。これでもし自分とけんじの関係が色艶を含むところまでいっていればそのまま佳主馬の脳内での出来事が現実に流れ出すのかもしれないが、何しろけんじはこれまで一切佳主馬に対してそういった類の緊張を見せていなかった。仮にも彼氏の家に泊まりに来ているのだから覚悟までは行かなくともちらっとくらいは具体的な行為について想像していていいんじゃないかな、と佳主馬も考えないではなかったが二人になる時間すら今がはじめてで、けんじは佳主馬と二人になろうとする努力をしている気配が微塵もなかった。佳主馬は結構な危機感を感じていた。もしかしてこのまま本当に、男女の関係を踏まずに一気に家族になる事をこそ、けんじは望んでいるのではないかと疑いすら差し挟みたくなっている。一番回避したいことではあるが、可能性を否定しきれない。
(けんじさんは本当に、僕のことをちゃんと彼氏としてすきなのかな)
傍から見た時に「ちょっと行き過ぎちゃったブラコンおねえさん」で通りそうで怖い。弟になりたくないばっかりに十三歳という低年齢でお付き合いを申し込んだ自分の軽率さが既に恨めしい。あの時よりも、むしろ、今よりも、年を重ねた格好と頭の状態で、好きだと言った方がまだ効果的だったんじゃないだろうか。
思考はどんどんとネガティブに滑り落ち始めたのに、佳主馬の目はまともにけんじの姿をとらえられず、彼女のからだが眼球に触れた途端に血の巡りが活発になりどうしようもない。
佳主馬はいくら暑くても扇風機で過ごすのを常としていたので、今も蒸しあがるような熱気を扇風機の廉価な風がかき混ぜているだけだ。網戸だけ締めて開け放している窓から、真夏の青臭いにおいが部屋の中へ吹き込んでいる。陽の光が発酵した独特のにおいの内に、時折まじる甘いかおりは自分の妄想の影響なのかしれない。
じっとりと背中が湿る。嫌悪の念と、発汗の核になっている衝動が爆発するすれすれの感覚、焼ききれそうな理性の輪郭がもどかしい苛々がしのぎを削っている。
けんじは夏といえばクーラーと仲良しで当たり前らしいので、名古屋の暑さにバテ気味だ。リビングで寛ぐことも提案したのだが「せっかくだから佳主馬くんの部屋に行く」というので連れてきたのが大失敗だ、と、佳主馬はけんじに見えない位置に顔を逸らし、ふっと自嘲気味に笑った。けんじは時折ハンカチで首筋や額を拭う。今も口元にハンカチをあてがって暑がっている。そのハンカチを嗅いだらきっと、さっきから鼻腔を悩ませるあまいにおいに満たされるんだろうとか想像が一層性欲に傾いている。このままじゃよくないだろう。佳主馬は何か、とにかく気を逸らすために遊ばなきゃいけない、でも何して遊ぼう、とさっきから悶々と考えている。
沈黙が茹る部屋の中、けんじは口元のハンカチを膝の上にもってきて、はしっこを指先で弄ぶ。
「ね、佳主馬くん」
不意に呼ばれた佳主馬は
「は?」
と声を一回裏返させた。けんじは少し驚いたようで小首を傾げたが、そのまま微笑を深くした。
「…二人になれたね」
と呟いたその唇がはにかんで歪む。のを、見た佳主馬の動悸は動悸たる分別を失ってどかんと破裂した。
(けんじさん、ちょ、それはない、それはないでしょ!)
けんじも佳主馬と二人でいることを意識している、と分かっただけで、佳主馬の意識はもう彼女と、彼女とほとんどゼロ距離にあるベッドばかりに吸着してしまった。暑さに慣れているはずの佳主馬の額に頬に汗が伝う。放って置いたらタンクトップを絞ったらぽたぽた雫が垂れる事態に陥りそうだった。
(だめだこのままじゃ本格的に犯しそうそれは駄目だ合意第一、合意第一、合意第一!)
胸中でスローガンを三度唱える。そうだ。合意が成立すれば何の問題もない。そしてそれはもう手を伸ばせば届く場所にあるのかもしれない。
(そうだ…性急なことしちゃ駄目だ。落ち着け、落ち着くんだ僕。とにかく丸め込んで…じゃない、どうにか、ど、ど、どうにか、そういう感じにもっていけばいいんだ。いける、いけるぞ、よしっ、よしっ!仕留めるやれるッ…いや、いやいやいや今のちょっと駄目だろ)
動揺の坩堝に叩き込まれた佳主馬は日常に帰依するための最も有効な方法として平生の習慣に縋りついてしまった。
「お…ОMCでも見る?」
パソコンに慣れ親しんだ女子らしくОMCにそれほどの抵抗もなくむしろキングカズマを好いている彼女は「わー見る見る!」とはしゃいで佳主馬の提案に賛成した。
までは良かったのだが。
佳主馬に寄り添うようにして一心にディスプレイを覗き込んでいたけんじは、途中からうろうろと視線を彷徨わせて、目に留まった本に目を輝かせた。
「ねー佳主馬くん。これ読んでていい?」
けんじの声に顔を上げた佳主馬は一瞬の膨大な量のあいだ硬直し、「いいよ」と頷きながら、見開いた目の表面にぷくりと涙の気配が湧き上がるのを抑え切れなかった。
それで、佳主馬は今、一人パソコンに向かい、けんじは本に没頭していて、冒頭に至る。
(…これは…)
佳主馬の脳裏に屈辱まみれのある推理が閃く。
(…おうちデート失敗パターンのテンプレじゃあないか…?)
しかもけんじが読みふけっているのは佳主馬のバイブルはじ●の一歩だ。数学がどうのとかのレベルじゃない。
(そりゃあ●歩はすばらしいけども…!)
いじめられっこだった自分にとって一●は希望のシューティングスターだ。実在の師匠はいれど、かの名作の存在がなければ現在のキング・カズマは存在しなかったかもしれない。
だが今この状況において佳主馬の聖典はあまりに非道な障害に変化している。何せ既刊は五十の巻数を超えている。けんじののろくたな読書速度を見ていると、滞在期間@佳主馬くんといっしょ☆の時間すべてを費やしかねない。
(このままじゃけんじさんそのうち「宮●くんかっこいーねー」とか言い出すかもしんねー…!)
一度読み始めると中毒になることは痛いほど知っている。どうやってこの状況を打破するための解決策が見当たらない。
(…僕たちに必要なことそれはコミュニケーションだ)
佳主馬は軽く咳払いしてから、ぽつりと聞いてみた。
「………けんじさん、楽しい………?」
横目でちらと窺ってみたが、けんじは紙面から目を逸らさずに
「うん、たのしーよー」
と柔らかい声音で答えてくる。
「………つ……つまんなくない?」
「うん、つまんなくないよー」
「そ、そっかー」
「そーだよー」
画面の向こうのキングカズマが、「これは佳主馬の分だぁぁぁ!」と言わんばかりの強烈な回し蹴りを対戦相手の腹に叩き込む。見事な放物線を描いて宙に舞うアバターを昏い目つきで見やりながら、佳主馬は頭を抱えたくなった。どちらかというと今自分の心境はキングではなく相手の方にシンクロしている。
(…………完全に詰みゲーじゃねーかこの会話!)
焦れば焦るほどバッドエンドに直行している気分だ。一度選択肢を間違えたせいで悪化していく状況から脱却しようと必死をこいてはどんどんドツボにはまっていく。さっきまでの浮かれて「やれる!」とか悲鳴染みた歓喜の声で満たされていた胸中がいまや冷凍庫並みにうすら寒い。
もう諦めて純粋な気持ちでもって、ほかのことして遊んだ方が有益なのかもしれないとぽつぽつ考えてしまう。草食男子とかいう自覚はさらさらないが、けんじに対して殊更臆病な自分自身は否定できない。そう、これは草食ではなくへたれという形容の方が相応しいだろう。
(一時の過ちでけんじさんを失うくらいなら別に今年の夏に童貞卒業しないでもいいし。そうだよ嫌われた時のが絶望的だ。このまま付き合ってさえいればいつか、いつか僕とけんじさんだって…)
「佳主馬くん」
「え?」
呼ばれてけんじのほうを見やると、けんじは読んでいた単行本を脇において、膝を抱えてこちらを見上げていた。
色素の薄い瞳に煌きが漲っている。佳主馬の頭の中身がぼぅっと霞んでいった。笑みを象るけんじの唇がふわりと隙間を生じさせる。
「宮●くん、かっこいーね!」
佳主馬は思わずけんじの手首を握った。あんまり細いのに心臓が竦んだ。けんじは佳主馬の勢いに後ずさったが測ろうとする距離を詰めて佳主馬はけんじの吐息が自分の鼻先を掠めたのを感じた。佳主馬は大きな声を出すのを、止められなかった。
「そこは●歩でしょけんじさん!」
扇風機の音と、蝉の鳴き声がじりじりと耳の奥で響く。
けんじは、口元を引きつらせたまま、呆然と首を縦に振った。
佳主馬はけんじにキスをした。けんじの唇がひやりとして破れそうに柔らかいことが、常のキスより深く重く佳主馬の神経に沁みた。佳主馬は自分の神経が未だ踏破したことのない領域に、傾いでいくのをもう止める気力がなかった。
離れるか離れないかの距離で彼女の名を呼ぶ。近すぎて顔が判然としない。佳主馬は掌を、そっと彼女の胸に押し当てた。緩い力で押しつぶしながら、汗まみれの思考の内側で、スポブラで支えられますかその胸、とか考えた。が、口から零れた言葉はそんなことじゃなく、「やわらかい」と、自分のものじゃあないような掠れた声で呟いていた。
佳主馬はけんじの痩躯を抱きしめた。華奢で頼りない感触に胸が引き絞られる気がした。痛むほどの愛しさばかりだ。泣きたいくらいにどうにかしてやりたい。
「けんじさん好きだ」
首筋に鼻先を埋めると、触れた彼女のはだが汗ばんでいる。
「好きだよ」
「か…か、ずまくん」
背中を二度ほど叩かれる。恍惚に酔った締まりのない顔のまま、佳主馬は少しからだを離した。
途端に目の当たりにした光景、けんじの小造りな鼻から、つぅーっと血が垂れていく様子を突然には理解出来ずに、佳主馬は固まった。
「………けっ」
佳主馬が声を上げた瞬間、けんじは「わぁぁぁぁっ」と真っ赤な顔で悲鳴を上げて、ベッドに乗り上げるとタオルケットを引っかぶって隅っこの方に逃げてしまった。普段の彼女からは想像できない素早さに呆気にとられ、薄水色で布製の丸いものをぽかんと見ていた佳主馬だったが、はっと我に返ると自分もベッドに上がり丸い物体にあたりを付けて手をかける。薄い感触は思惑通り肩らしい。
「けんじさんっ駄目だよ鼻血止めないとっ」
タオルケットがやだっとか言う。
「やだじゃないでしょ!テッィシュあるから取り合えず止血しなきゃ…」
「やだっ見られたくないっ」
「見られたくないもなにもけんじさんの鼻つっぺはもう既出だからいーんだよ!」
「いいのっ、やなんだよ!ティッシュもってきてっ」
(くそっ、タオルケットの分際でがんこなんだから…!)
しかたがないのでティッシュをもって行ってやると、白い腕がにゅっと伸びて箱を回収した。佳主馬はタオルケットがもぞもぞ動くのを眺めていたが、先ほどの己の醜態に恥じ入り、胡坐をかいて俯いた。
「……けんじさんごめんね」
もしあのままだったら、と考えるだけでぞっとする。こんな劣情で彼女を驚かして怖がらせてしまった。けんじの鼻血システムは防犯にも有効らしい。
「…僕、もうしないから…」
己の愚行がきっかけで彼女から警戒されるなど耐えられそうにない。けんじの性格上、しばらくはぎこちないのは仕方がないかもしれないが、それだけでも酷く堪える。
(だいじにしたいのにめちゃくちゃにもしたいとか、男って馬鹿だ)
知らず、重たいため息をついてしまう。帰ってきた聖美に何を言われるか分からないとか、憂鬱が手の拡げ始めたころだった。
タオルケットのかたまりがちょっとずつ、こちらににじり寄って来るのに佳主馬は気づいた。目口はついてないけどバー●パパにこういうのいたな、とか思っている内に、タオルケットはぺたりと佳主馬の背中にはっついた。
「……けんじさん」
消え入るような「僕もごめん」が聞こえた。
タオルケット一枚越しに、互いの体温が行き交う。
「だっ…だって…だって…」
「う…うん」
「だって…ね…?」
佳主馬くん、おっきくしてるんだもん、なんて聞こえた瞬間意識が遠のいて佳主馬は胡坐の体勢からベッドに崩れ落ちた。
「か…佳主馬くん…?」
佳主馬は枕を抱え込んで小さく小さくなると、
「……もーーーーー…しにたいーーーーーーーーーー…」
うわ言をいい、目を閉じた。
けんじの鼻血が止まると、二人で出来るパズルゲームで遊んだ。夕暮れが街を赤く熟れさせていく中、偶に触れる指先が含む気配や、些細なやり取りに滲む秘密めいた温度に、佳主馬は浮かれて仕方がなかった。けんじの笑顔も若干変化したようで、可愛いのは前々からだが、なんだかきれいになったみたいだった。
どちらともなくコントローラーを離して、色んな話を取り留めなくやらかした。繰り返し流れるデモプレイをぼんやり眺めながら、お互い指を絡めていた。時折ちょっとくすぐってやったりすると、けんじが笑って怒るので、佳主馬は嬉しくて楽しくてしあわせで、何回でもけんじの手の甲をくすぐった。
聖美たちが帰宅したのは夕焼けも潜み始める午後6時くらいだったが、二人は電気もつけないでずっと話し込んでいた。「ただいまー」という声に、「おかえり」「おかえりなさい」と返事して、薄暗がりの中で視線がふとかち合う。キスをしたら、ちゅ、と吸い付かれた。その感触を振り払うように立ち上がり、佳主馬は部屋の電気を点けた。

「今晩は筑前煮とお魚ね。筑前煮は出かける前に作っておいたんだー。お魚焼いちゃうから、けんじちゃんお膳運ぶの手伝ってくれる?」
「わーい。はーい」
のれんを潜って台所に入るけんじを追って、佳主馬ものれんをめくった。
「あら佳主馬も手伝ってくれるの?」
「まぁけんじさんばっかに手伝わせるのもね」
「あっそうだっ。聖美さん」
筑前煮を器によそいながら、けんじが声を上げる。
「ごめんなさい、あとで佳主馬くんのベッドのシーツ洗わせてください」
母の顔が笑顔のまま凍てついた。慌てた佳主馬がけんじを遮る前に、けんじは申し訳そうな恥ずかしそうな、はにかんだ表情で微笑みながら、
「ちょっと血がついちゃって。えへへ」
先に洗っておくべきだったとかどういう表現だよこのひととか色々だったがとにもかくにも。この時の、聖美の凄まじい視線の恐ろしさを、佳主馬は生涯忘れないだろうなと思った。
  
                              (おわり)
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  1. 2010/04/21(水) 22:27:30|
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