炎如交際

キング×(数学+鼻血+保護区域)=世界平和 を提唱(したい)ブログです

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【ジオラマぐらし】FOR HARUさん

リクエスト企画ですっ…!
HARUさんリクエストで、【高校生佳主馬の学園生活をkzknで】です。。
…しかし健二さんが出ていない上にオリキャラ出張りっぱなしの完全俺得話、に、なって、しまいまし、た…すみませ……!!!
健二さんが理系なので文系男子と佳主馬を絡ませたかった結果がこれでしたすみませんでした
頗る楽しく書かせていただきました…HARUさん、素敵なリクエストをありがとうございましたっ!!
ジオラマ暮らし

時計はもう六時を回っていた。友人が所属している演劇部につい長居をしていた俺は、図書室を閉めなければいけないことを思い出し慌てて部室を後にした。
冷たい雨は執念深く春先を濡らし続けていた。廊下に連なる窓の外は花曇に冷えている。曇天は日没のために黒ずんでいく最中だ。
こんな時間まで残っている生徒はいないだろうと踏んでいたので、俺は、図書室に踏み入れてぐっと息を呑んだ。
閲覧席のテーブルに十数冊、本を広げて頬杖をついているのは俺のクラスの池沢佳主馬だった。俺がはいってきたのにも気が付かない様子で、何やら眉根を寄せて紙面を熱心に眺めている。俺は少しの間ぼんやり佇立していた。
池沢は俺のクラスメイトではあるけども、そこまで親しくない。長く伸ばした前髪に、妙な陰りを纏わせていつも不機嫌そうな目つきで過ごしている。引き締まった体躯と長身の持ち主だが、運動部に所属している様子はない。たまの体育でもやる気を感じさせず大抵は言われたことをこなしているだけだ。前述したが仲が良い訳じゃないので勉強ができるかできないかも分からない。誰かと喋っているところもあまり見かけない。背が高い以外に特に目立たない生徒だと俺以下クラスの殆どが認めるだろう。
ただ、いつか、夏服の彼を見かけた時に彼がクラスの誰よりもきれいに日焼けしていたのが、印象に残っている。
池沢は俺の記憶に真夏の残滓だ。それもものすごく希薄なフィルムだったのだけれど、こうして誰もいない図書室の中で彼一人が忽然とそこにいる事実で鮮烈に色彩を再生させた。学校で過ごす分には彼のことなど一切意識に上らない。なんだか池沢は変な存在感があるなぁと俺は思った。
「…池沢」
呼んでみると、池沢は顔を上げた。左目が俺を認めて、あぁ、と低く返事する。俺は彼に歩み寄る最中、ふと足を止めて、図書室を見回した。鉄で出来た棚に詰め込まれた本たちは殆どが古い。新しい書籍のための棚は作られてあるが、新刊はデータ媒体でうちの図書館が契約しているOZのサーバー上に掲載されるようになっている。蔵書のデータ移行も順次行われているので、図書委員なんてやってても実は最近図書室の開け閉めしか仕事がない。
古い紙と情報のにおいと雨の音が混ざる。五時半をまわると半分、照明が落ちる仕組みになっているから室内は薄暗く湿っている。池沢は薄黄色の透明な光が僅か潤う紙面の上に、懸命に文字を貪っているようだった。俺はしばらく彼の様子を見つめていた。
「…そろそろ図書室閉めるけど」
俺がそういうと、池沢はまた顔を上げて、当惑そうな顔をした。
「もうそんな時間か」
「六時を回ってる」
「…あぁ、本当だな…」
池沢はカウンター側の壁にかけてある時計を見やり、大きく伸びをした。襟ぐりから覗く、鎖骨から肩へかけての筋肉がしなやかだ。俺は貧弱ななりだから、ついみとれてしまう。
「いつからいたんだ?」
「んー…かれこれ、四時くらいから…」
「もう二時間じゃないか…何をそんな熱心に調べてたんだ?」
俺はとうとう彼の近くまで来ると、手近の一冊を取った。池沢は別段咎めるでもなく、肩に手をやって首を回していたので遠慮なくタイトルを見る。
年季のいったハードカバーに、箔押しで印字されたタイトルに俺は眉を顰めた、だろう。
俺は一冊目を置くと、もう二、三冊、目を通した。はじめの衝撃に影を刻んだ俺の眉間は、だんだんと溝を深くしていくでしかなかった。
池沢が読んでいたらしい本の群れは雑居ビルの有様だった。古典の心理学、解剖学、仏教その他宗教、近代文学、詩集、中学生向けの道徳、脈絡がない。愛の格言ばかり並んだ分厚い文庫もあった。俺は本が好きだけど、文学一辺倒でついでに言うと戯曲狂いだから池沢の読む本の共通点など探れる気配がない。
特に心理学が大半を占めている。フロイトなら名前ぐらいわかるけどタイトルに馴染みはない。自我とエス?
俺は改めて池沢を見た。だが彼の意図が表出している訳もなく、それどころか先刻よりも彼の人間性だとか性格だとか全てが曖昧模糊に俺の意識を揺籃するだけだ。黒い髪の毛がまるで墨のようだった。
「…これ、全部読んだの?」
「いや…飛ばしとばしで…」
「…何か、調べ物だったのか?」
「………俺はどうも頭が悪い」
「え?」
急に自らを罵倒したかと思うと、池沢は机に突っ伏した。綺麗な襟足だ。
「…どうも、頭が悪くて…訳がわからないから本でも読んで少しは利口になりたかったんだけど…駄目みたいだ。愈愈訳がわからなくなった。俺はきっと、馬鹿なんだ」
「…俺も頭に自信がない。池沢が何を言っているのかさっぱりだ」
「そりゃ、そうだ。おぼつかない俺のうわごと程度で俺のことが分かってたまるか」
どうも軽蔑された。だけど別段嫌な心持はしなかった。俺は手にしていた本を元に戻した。池沢はけだるそうに顔を上げた。疲労が滲んだ目元に俺は、彼の顔立ちが人並み以上に整っていたことを発見して内心驚いた。
「…なァんか。くだらないこと言った。忘れて」
「…かまわないけど…」
「…じゃあ…忘れてくれるってのを、信用して言うけど一つだけ質問していいか」
池沢がまともに俺を見上げた時、前髪の流れが徒に作用してはじめて俺は彼の素顔の全貌を刹那眺めた。どんどんどん、と、どこか遠くのほうから、乱暴な靴音が散乱している。雨だから、野球部あたりがまた、階段を駆け上って鍛錬しているのだろう。
「何?」
「…男の人の襟足が綺麗と思うのは異常か」
「は?」
違うあの騒ぎは俺の心臓の内側に生じている。
「…数年前に起こした気の迷いが消えないのは俺が未熟だからか」
「…質問増やすな」
「…ごめん。あぁぁぁぁキモいよなそうだよな。悪い、いいや。忘れてくれたらいい…あ、でも、別に言いふらしても、」
どうでも。と呟く池沢の唇から目が離せなかったのはなぜだ。
「…言いふらしたりしないよ」
呆然と呟きながら、俺は、池沢がやたら散らかした本の群像の焦点を垣間見た気がした。
「…池沢は、好きな男がいるのか?」
池沢は口の端で笑うだけだった。その曲線は俺に完全な軽侮を描いていた。だけど俺はやはり、嫌じゃなかった。
ざぁぁぁぁ、と、雨音が激しさを増して窓を鳴らした。俺と池沢は殆ど同時に窓へと顔を向けたと思う。
「…ひどい雨になってきた」
「そうだね…」
「…図書室、閉めるんだろう?ちょっと片付けてくる」
「いいよ、面倒だろう、戻す場所もあちこちだし。カウンターに置いておくよ。俺が明日片付ける」
俺がそう言うと、池沢は怪訝に俺を見た。俺は少し顔が熱くなるのを感じながら、俯いてしまった。
「…なら…お言葉に甘えて?」
池沢は散乱している本を揃え、立ち上がる。やっぱり背が高い。彼の長身から受けるなにか圧力が単に質量の問題を越えて俺を圧迫するのを俺は自覚しないではいられなかった。
「あ…と、良かったら、貸し出し手続きするよ?時間外だけど…貸し出し手続きだけはアナログのままだから、どうとでもなるから」
俺は池沢の手に余った数冊を手元に掻き集めながら、声を絞り出してそんなことを言う。池沢は少しの間考えている様子だったが、じゃあ、頼もうかな、と微笑した。
カウンターに池沢が読んでいた本を仕舞っていると、池沢が本を二冊手にして戻ってきた。俺は渡された本を見て首を傾げてしまった。
池沢のもって来た本は位相幾何学、確率論をそれぞれ論じている小難しそうな代物だった。
「池沢、数学好きなの?」
背表紙の内側にくっ付いている貸し出しカードを引き抜きながら、俺が何の気なしに訪ねると、池沢は案外の端正な顔を思いっきり歪めて、「大ッ嫌いだ」と吐き捨てた。
池沢は不思議な人だ。




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  1. 2010/05/05(水) 21:36:52|
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