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炎如交際

キング×(数学+鼻血+保護区域)=世界平和 を提唱(したい)ブログです

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【びらん ①】※けんかずR18

かなり特殊なブツなので、必ず注意書きに目を通してからの閲覧をお願い致します。
びらん


こないだ俺妙な体験してさァ、と声を張り上げた同僚を、佐久間はちらと横目で撫ぜた。
それまでは机に噛り付いた格好で背を丸めている小磯の、痩躯がぎくりと時折痙攣しながらに計算式に没頭している様を眺めていた。早く帰ろうと声をかけるも梨の礫なのでそろそろ放擲して一人で上がろうかと思案していた矢先だ。
「何が」
惰性で先を促せば、シャツを捲くり腕を組んだ格好のまま同僚は歯を見せて笑う。
「おとといくらいか。残業を終わらせて帰ってみたら地元に着いたのが零時近くだ。俺の家は月島の方なんだけど、明治からの建物がいまだに残って街の顔をしているから相当古いね。俺は何しろ川沿いを歩いて下宿先に帰らなくちゃいけないのだからたまらない。お天道様に照らされている時は趣があるけれど、電灯も乏しい真っ暗な中で柳の下を歩いてみろよ。いくら佐久間でもぞっとするよきっと」
「いくらもなにも、俺はもともとそういう話題はあまり得意じゃないぞ。なんだ、それでまさか、幽霊にでも逢っただなんて言うなよ」
佐久間は肩を竦めて窓の外を眺めた。八月の中旬を越して猛暑は未だ衰えをしらない。雲を焼き尽くした橙色の炎がぎらりぎらりとアスファルトを焼く。既に同僚には気をなくしていたが、語る男は鞄を抱えなおす。口から先に生まれたのだと揶揄されるこの男は例外的に職場の人間から好かれていて(話題が健全であり大衆娯楽で不快にならないのは彼の人徳だろうと佐久間は思う)、帰る支度を整えた男女数人がまばらに集いつつある。佐久間は親友を見たが、視線を投げた刹那にまた痙攣していて、構うなと全身で言われたみたいな気がした。仕方がないので話を聞こうと観念する。切り出させたのは自分だ。
男は唇を湿らせて、勿体付けた口ぶりで先を話し出す。
「逢っちゃあいないさ。逢ったこともないけれど、実際目で見るよりもオソロシかったぜ。柳の黒い影がこう、一段薄い闇の中でちらちらして、ふいに生臭い風を嗅いで…いつにもまして気味が悪くて、早足だったんだな俺は。そうしたらさ、どこか遠いところから…まさかビル風でもないだろう…さっきも言ったけど、日本然とした低い建物が軒を連ねているような区画さ…ひぃひぃひぃと、女の泣き声がするんだ…」
佐久間の傍らに居た女性社員がきゅっと肩を竦めた。内容は陳腐この上ないが、話し手がなかなかの技巧で挑んでくるので雰囲気はある。
「空耳だって言い聞かせながら、まぁ俺は我が六畳一間の王国に逃げ込んだ訳だけど、自分の革靴の音が不吉でね、生きた心地がしないッてのはまさにああいうのを言うんだろうなぁ…」
「おい」
眉を寄せて表情を作っている語り手の、後ろに立っていた総務部の男が、情けない顔をして声を上げた。
「お前さっき、月島と言ったか。じゃあもしかして…」
語り手は迷惑どころか援軍を得たとでも言わんばかりの暗いうきうきとした熱を込めて、そうだ、と殊更低い声を出した。
「今朝方に、女の溺死が出た川の、分岐した先の下流が流れているところだよ…」
うわぁ、と、割って入った男が怯えた声を上げる。その奥では女性社員が二人、手を取り合っていた。
「こわぁい」
「それ絶対ほんものですよね。やだ、私しばらく一人で夜歩きたくないなぁ…」
「あ、そしたら仕事遅くなったら俺送るって。ね、なっちゃん」
「また、いっつも口だけなのよあんた…」
佐久間はふっと顔を上げた。デスクに座っていた小磯が急に立ち上がったからだ。その後姿から、「ばかばかしい」と吐き捨てる声がしたので、佐久間は軽く目を瞠った。たむろしていた数人も、驚いた顔で小磯の方を見ていた。小磯は振り返った。数式に没頭した後の青ざめた顔に、二つの眼が鈍い光を宿して誰でもない、虚空を睨みつけて、彼は乾いた唇を微かに震わせながら続ける。
「幽霊だなんて居る訳がない。そんな不条理はこの科学の時代に無効だ。人間の生きている仕組みも死ぬ仕組みも既に分かっているだろう焼かれて骨になるだけだ、死んだあとに生きた時の何かしらが残るだなんて戯言は人間の妄想だばかばかしい。聞こえたものは錯覚だ、脳が勘違いをして在りもしないものを」
のっぺりした無表情で言う小磯の迫力に、皆押し黙っていた。怯えと、非難の入り混じる視線を一身に受けて、小磯ははっと、数回忙しく瞬きをした。憑き物が落ちたようにいつもの穏やかさを取り戻した彼の顔面に、しかし今度は生気が失せていく。紙のように白くなった顔を俯かせて、すみません、とどもりながら呟いた小磯はデスクに散らばる書類とか眼鏡、筆記具をかき集めて鞄に詰めると、恐縮そうに身を縮ませたまま早足に職場を出て行った。残された人間は一同狐につままれたような顔でその後姿を見送った。
「…なんだかなぁ」
ぽつりと誰かが呟いて、それで呪縛から逃れた者から日常の呼吸を取り戻していく。
「なんか小磯さん、ちょっとコワイ。ただの世間話なのに、あんな風にさ…言うことないよねェ」
「ね、どうしたんだろう。最近だよね、様子がおかしいのって…?知ってる?あのさ…」
女たちがぼそぼそと囁き交わす脇で、大仰に肩を竦めた男が次いで芝居がかった格好で頭を掻いて見せた。
「まぁ、小磯大先生は疲れているんだよ。勉強勉強で、神経衰弱でおられるのさ。狂ったみたいに数式ばかり相手にしているんだ、我々凡人のちょっとした楽しみも、繊細な彼の…」
ばん、と大きい音がした方を一斉に振り向く。佐久間はデスクから鞄を持ち上げながら、「仕事持ち帰りすぎかなぁ」と惚けた声でつぶやいた。
「俺も帰りますわ。お疲れ様ですー」
「あ、あぁ…おつかれ」
困惑気味の挨拶を返した上司を佐久間は好きじゃあなかった。新薬開発のプロジェクトに、彼より後に入社した小磯が同列に抜擢されたのが気に入られないようで、あることないことを平気で吹聴しているケチな輩だ。悔しいのなら実績なり結果なり出せばいい、給湯室で女口説くしかのうがない癖にと剣呑な毒を胸中で吐くのは、学生時代から密かに尊敬までしている親友を悪く言われた事に対しての苛立ちが加算された結果だ。佐久間は普段人間をあまり憎めない。
オフィスを出た佐久間は小磯に追いつくため少し走った。ビルの外は建物の中から懸念した通りの灼熱だ。とぼとぼと肩を落として歩いている小磯に追いつくと、その背中をぽんと叩いた。
「健二」
小磯は緩慢に顔を上げると、真夏だというのにひどく青ざめた顔で弱弱しく微笑した。
「…佐久間…俺、さっきさ…」
「あ?あー。気にすんなって。疲れてるんだよお前」
薄い肩をぐりぐりともんでやる。骨と皮しかないようでしっかりと血流が滞るしこりがあった。実は責任感の人一倍強い彼が、任された仕事の重圧に必死で抗っているのを佐久間は知っている。不器用な男なのでその取り組み方が痛々しいまで突き詰められているのも知っている。
「…青白い顔してさ…お前がとり憑かれてるみたいだ」
冗談めかした声に、再びうなだれていた小磯はきっと佐久間を振り仰いだ。笑い混じりで言ったはずの佐久間は、稀にしか見せない真剣な面持ちで、怯えるように収縮した小磯の瞳を見返した。
「な…なにを…そんなこと、あるわけないだろう」
「………健二、おまえなんかあったのか」
小磯は目を伏せて、神経質に瞬きを繰り返した。口元が歪んでいるのは笑おうとした結果だろうか。
なにもないよ、と、早口の声音に、尋常ではない響きを感じ、佐久間は胸にぐぅっと不安が膨らむのを感じた。霊だとかそんなことを懸念しているのではない。本当に神経が参り始めているのではないかと、小磯の様子を見ていて穿ってしまう。
「…まー、とりあえずさ。お前明日仕事休みだろ?夏希さんのところでも行ってきたらどうだ?」
「え?」
夏希の名前に対し、小磯の声のトーンがいくらか華やいだので佐久間はよしよしと思った。
「最近会ってないんじゃないか?」
「え、でも…べつに俺、まだ、夏希さんと恋人同士っていう訳じゃあないし…」
「いいんだってそういうのは!お前は小心者のくせに融通利かないんだから少しは男心を奮発しろって」
「そ、そんなこと言われても…」
口ではそう言いながら、小磯はもう篠原夏希の家を訪ねてみようという気になっている。
篠原夏希は佐久間と同様学生時代からの友人で、学年が一つ上の先輩だった。佐久間と二人で現代物理工学貢献同好会、とかなんとか若気の至りで運営していたところ、がらくたばかり集めて遊んでいた二人の活動に興味を示したらしい彼女が何かと同好会の部室に入り浸るようになったのが付き合いの始めだった。人の多い大学の中でも一際の魅力を放っていた彼女に対して、小磯は以前から恋と呼ぶにも幼気な憧れを抱いていた。大学を卒業すれば途絶えるだろうと思われた彼女との交流は、佐久間と小磯の二人が共に彼女の親戚が経営している製薬会社に入社したことでなんやかや続いていた。
駅で佐久間と別れた小磯は、定期を使わず切符を購入して帰り道とは逆の電車に乗り込んだ。がたんがたんと、尻の下にある硬いシートに揺さぶられるごとに最近は不安しか兆さなかったのだが、今は夏希の家に向かっているという高揚が刺激されるばかりだ。小磯は車内で風をかき混ぜている扇風機の動きを眺めながら、ほぅっと放心した顔で、電車に運ばれていった。

篠原の家を訪れるころには、大方日が落ちていた。アスファルトが日中含んだ熱気を吹き上げる小路を汗を拭い拭いで歩いた小磯は、夏希の清潔な笑顔に出迎えられて少し気後れした。自分は汗だくなのだ。
「健二くん。いらっしゃい。なんだ、来てくれるなら連絡くれればよかったのに。夕飯、まだ間に合うかな」
「いや、その、そんな、お気遣いなく…すぐ帰りますので…」
恐縮する小磯の、鞄をひょいと取り上げて、夏希はにこにこと「上がって」と促す。小磯は何回も頭を下げながら、靴を脱いで玄関を上がった。夏希はもう廊下を歩き出して「健二くんが来た」と報告している。
浮かれてしまってとうとう来てしまったが、夕飯時はずうずうしかったな、と小磯は悄気た。しかしそんな健二の後悔に少しの感化もされず、おっとりとやさしい愛嬌を保っている夏希の母は「ちょうど良かったわ、煮物だったからたくさん作ってあるの」ところころ笑った。
夕飯の支度が整うまで小磯は夏希の部屋で夏希といるよう言われた。彼女の部屋に入るのは初めてではない。最初は動悸と緊張で呼吸するのもやっとだった。今でもやはりおどおどしてしまう。夏希の部屋はいつでもきれいに片付けられていて、ほんのりと甘い香りがする。
が、普段は整頓してある夏希の部屋の真ん中に折りたたみの低い机が出されていて、その上は結構な数の写真で埋め尽くされていた。目を丸くしている小磯を見上げて、夏希はえへへ、と笑う。
「ごめんねー。散らかってて。ちょっと、アルバムの整理してたの。最近やってなかったからさァ、たまっちゃって」
夏希は少し頬を赤らめているようだった。まさかこんな程度でだらしないところを見られたとでも思っているのだろうか。小磯は首を横に振って、「むしろお邪魔してすみません」と頭を下げた。
「あー。またすぐ謝る。健二くんその癖だけは早く直してね。良かったら写真見てて」
旧家の出である篠原家は親戚づきあいが昨今のものより濃密らしい。毎年数回、全国に散らばる親戚が集まったりなんだりで写真の増え方がものすごいというのは前々から聞いていた。おおよそ親戚づきあいなどという言葉には疎遠な家庭で育った小磯には、それがどんなものか想像出来なかったが、今目の前の状況を見てこれは大変だろうなぁと胸中でぼやいた。アルバムの整理など些事に過ぎないだろうが、小磯にとってはこれだけで重労働に組する。
夏希に勧められるまま座布団を敷いて、ぎこちなく写真に手を伸ばす。夏希の家族しか顔は分からなかったが、さすがに親戚だけあって彼女に似た雰囲気の人間たちがぱちりぱちりと記録されている。
数枚の写真を順にはぐっているところで、小磯はぎくりと固まった。写真の整理に真剣に取り組んでいた夏希が、その様子に気づいて首を傾げる。小磯が凝視しているらしい一枚を摘み取り上げて、眺めた彼女の愛らしい顔に苦痛めいた影がよぎる。
「あぁ…まだ整理してない分、あったのね…」
苦しそうに息をついた夏希は、寄せられた眉の下で愛しげな目つきをする。
「…この子ね、…もうどのくらいになるんだっけ…亡くなったの。心臓が悪かったの」
夏希は、写真の右下に刻まれた日付を見て、この写真撮った年だ、と静かに呟いた。
「元気だったんだよ。ね、この写真だって、みんなで上田…あ、本家があるんだけどね…集まった時に撮ったのよ…入退院繰り返してさ、それでもほんとうに、死んじゃうまで、元気だったんだよ…この子が亡くなった年のうちに産まれた妹さんが、もう小学校に上がるって聞いたから…ろくねん。6年か…そっか…」
一瞬、小磯が目の前にいることを忘れ、しばらくの間夏希は懐かしい少年の姿に見入って唇を噛んでいた。
小磯が立ち上がって、脱いでいた背広を着始めたので夏希は「えっ」と思わず声を上げた。小磯は背広を着込んでしまうと鞄を取り上げて、座ったままの夏希にすみません、と頭を下げる。
「え、なに、どうしたの?」
「すみません、すみません…か、かえ、帰ります、帰ります僕…」
喘ぐように言った小磯は、酷く蒼白な顔のまま、襖を開けた。夏希も立ち上がり、尋常ではない彼の様子に呆然と佇立するしかなかった。
「何、私、なにかしたなら、謝るから」
「ちが、います、すみません気分が、気分が優れないんです…頭痛が…すみません、帰ります…」
小磯は夏希にもう一度深々と頭を下げてから、覚束ない足取りで階段を下りて、玄関で革靴の踵を踏んだままがらりと格子戸を開けて篠原家を出て行った。背後から夏希と夏希の母親の、困惑したやり取りがそよいでいたが、それに対して取り繕うこともなく小磯は真っ暗な路地を駅に向かい歩き出した。生ぬるい風が彼を嘲るように吹き付けては澱む。
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  1. 2010/05/24(月) 00:10:30|
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