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炎如交際

キング×(数学+鼻血+保護区域)=世界平和 を提唱(したい)ブログです

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【芥】

中二病全開の気持ち悪いおはなしですのでご注意ください。
!kzknですがモブ健の描写がありますよ!



肌寒い夜だった。粉のような闇が月の光で湿り気を帯びて妙な感触で健二の足元に溜まっている。健二は扉の前で、重たい鞄の内に億劫な指先をまさぐらせている。鍵がどこにいったろう。健二は鍵穴を朦朧と眺めている。物理的干渉がなければ部屋の中にも入れない。健二は急激な疲れを感じてその場にうずくまりそうになる。
けれどどうにか体を起立させなければならない。擲つほどの神経は失せている。がらんどうの気持ちは案外と強靭で健二の体の隅々を行き渡り倒れないだけの力を与えている。というか、とどのつまり倒れるだけの甲斐性がないのだろうと思う。おもうことすら全自動式だ。健二はようやく探り当てた鍵を使い扉を開けた。
玄関先も冷えていた。おもむろに壁のスイッチをぱちんと上げる。スイッチに触れた時に指の腹がかさついていることを知る。血が足りないのか、乾燥しているのか、(うるおいっていうものがない)健二は歯噛みする。
混乱しているのかしれない。それよりトテモ疲れている。意思を支えきれない。意思が脳髄の表面を滑り滑り尽くして爪の先から蒸発していく気がした。健二は靴を脱がないでもいいから土足で室内のコンクリに乗り上げる。
日本にいた時は散らかして生活していたのに、どうもここだと整頓している。埃っぽい床がだらッと際限なく続くような気がするが狭い部屋だ。健二は紐靴の紐を解くのもひどく大儀い気がしたので、靴を穿いたまま寝台に上半身をぐたりと預ける。
健二は顔面をシーツにこすりつけた。もう何ヶ月太陽にさらしていないか知れないシーツの表面はざらついている。健二はしばらくじっとしていた。こうして靴のまま寝転がることもざらなので、室内は漫然と埃っぽい。
健二は顔を顰めたまま、しばらくそうしていたが、ぐっと上半身を持ち上げる。水を飲みたい。中古で仕入れた旧式で小さな、うっすら緑色をした冷蔵庫の前にしゃがみこむ。じりじりじりと回線が熱を持つ様子がそのまま、脳みそに枝分かれする血管になる。ペットボトルを手に取ると重たかった。健二は、1Lのペットボトルを胸に抱いて、尻をコンクリートにつけて胡坐をかいた。ペットボトルに巻かれたラベルには母国のものではない言語がのぺっと印刷されている。これだけではない健二は自分の貧弱な肢体だけが、擦り切れた魂だけが自分の故郷のもので、外界は自分の国から遥かな距離を差し挟んでいる気持ちを覚えた。
健二はのどの痛みを感じた。鼻腔から入り込む空気すら乾燥していて健二の血筋を苛めているみたいだった。水を飲もうと意思は働いているのだが、ただ細いかいなにごつごつした容器を抱えて、とぷりとぷりと冷えた水がたゆたうのに任せている。顔の皮一枚のすぐ下に、今敷いている薄汚れたシーツの気配がする。思考から出た垢が砂っぽく、硬い無数の粒と化して、数字で編んだ絹の上を汚す。繊維の隙間に入り込むそれらのせいで健二は何も考えたくない。
薄暗い中で自分の指から、心臓へ向けて伸びている甲、手首、腕に向かいなまっちろく見えた。健二は自分のはだいろがさまざまに変化するのを眺めている。例えば他国で拵えられた人の上で、先ほどの健二の皮膚は琥珀に似た黄色味を帯びていた。同じところで育った人間の、夏に焦がされ浅黒く日焼けした皮膚の上では、まるで怯えそのもののように青白く、自分は、青白くなる。
健二は目を閉じた。がくりとうなだれて、ペットボトルを抱えたまま体を横たえた。痩躯を脅かした衝撃には程遠くものおとは静かだった。健二は暗闇の底の底に叩きつけられたような、気がしたのだけれど。

翌朝Kはいつもどおりの顔をしていた。平常の特権として、目の下にいつもより酷い陰りを帯びている健二の表情に嘲笑を浮かべていた。Kは頭が良く、天才的な数学の感性を血に忍ばせた男だったが、不安そうな子供じみた顔つきに反して強情で少しだけ高慢な性格をしていた。健二は憮然とした表情で、自分の隣を示したKの隣に大人しく座った。
授業の時間を10分ほど過ぎていたが、年老いた教授が来る気配はまだ無かった。彼は学会でも権威ある数学者の一人に数えられていたが、最近だとところかまわず眠ってしまう。研究室で昼寝する。中庭のベンチで死んだようにぐったりしている。講義中にうたたねをして、同じ方程式を何回か繰り返し説明した時もある。たまたま講義を受けていた健二は、その様子に魚の回帰行動を重ねて、ああなれたら平和だろうとため息をついた。あの人は別の生き物相手に数学を教えるのがもう嫌だから、ああして夢の中に閉じこもり残り少ない自分の内側の数で遊ぶのさ、とは、Kの言葉だ。健二は肯定しなかったし、正直Kの言いたいことが良く分からなかった。
健二はKに親しみを感じたことはなかった。ただ、この大学に留学している異邦人同士でなんとはなしにつるんでいることが多かった。Kはいつでも健二のへたくそな英語をなじった。健二はだから、あまり喋らないでも彼の近くにいた。Kの肌は白く顔にはそばかすの跡があって、髪はくすんだブロンドだ。酷薄そうな口の端にいつでも皮肉っぽい影を潜ませている。確か北欧辺りの生まれだったかと思う。
健二はもとからあまり喋ることは好きではなかった。意味に制約を設けることがない母国語を使い、健二は日本でならそれなりに喋ったけれど、数学という共通項のツールを切磋琢磨するために留学してきたので、文字はいよいよ希薄になって、健二は数字でばかり考えることが出来た。
Kは健二に、まるで血を吐くみたいに数学をするなと評価を下したことがある。その時健二は、一度鼻血を出すまで数学をしたことを思い出して苦笑した。
互いの数学のスタイルは似ているでもなければ正反対でもなかった。異質という形容が相応しいように思えた。しかし彼らは彼らを取り巻くその他の生徒から似たもの同士で片付けられていた。健二は彼と似ているところなど無口であるぐらいしか見出せない。
ケンジ、と呼ばれて健二は視線だけKに走らせた。Kは灰がかった青い眼を健二に向けもせずに頬杖をついている。
「じーさん、来ないよ。サボろう」
Kはそう断言すると、一応広げていた教科書類と筆記用具を無造作に、使い古した布のトートバッグに投げ入れるとさっさと席を立って廊下を目指す。一等広い教室内の長机には、生徒らがそれぞれきちんと着席していた。が、ざわついた空気は容易にKの脱出を許した。Kひとりではなく、さっきも男女の一組が連れだって教室を出て行ったばかりだった。健二はKの背中を見ていたが、そのうちに立ち上がり、Kが漸く教室の出口にたどり着いた頃歩き始めた。
教室から出る時に、高い天井に設置されたライトの光がいやに目についた。

Kは廊下を抜けて階段を降りて中庭を目指した。健二もそれに従った。最近校舎の改築が進み、新しい匂いのするこざっぱりとした建築が並ぶようになった敷地内だが、健二たちがいた校舎は旧式で、壁や天井には影ではない薄暗さがこびりついている。中庭へ出る扉のたてつけもいよいよ悪くなっていて、Kが緑のペンキが剥げかかった木製の扉を開くと蝶番が軋む音が健二にまで聞こえた。中庭には定期的に庭師が入るので、植物は清潔に整えられている。といっても、背の低い木がぽつぽつとベンチの周りに生やされて、あとは芝生が広がるだけの味気ない様子だ。
中庭を抜けて校舎裏へ出ると少し有様が変わる。敷地を区切るために高い木が植えられていて、池があり、噴水が置かれている。花をつける潅木の群れがそこかしこにある。季節によればふいに伸ばされた水仙なども見れる。天気のいい日だった。空と葉の緑が相克して、青みがかった陽炎を生む。
健二はKの背を追い、苔むした石畳を踏み歩く。Kは無言で先を行き、池のところで立ち止まる。睡蓮の葉が水面に、古いステッカーのように点々と貼られている。
健二はおぼつかない英語で、もう、あんなことに付き合わない、とKに言った。Kは漸く健二の方を向いて、ゆるりと酷薄な笑みを浮かべる。それでただ頷いた。
「…少し前に」
Kは言いながら、体を曲げて小石を一つ摘み上げた。神経質な性格を反映した指先でそれを弄びながら、Kは続ける。
「少し前まで好きなヤツがいた。長い間ずっと好きだった。ヤツも僕を好きだと言った。ずっと好きだと思っていた」
健二は唇を引き結んだまま、Kが放り投げては受け止める石を眺めていた。やがてそれが描く放物線に数式が絡み付いていく。軌跡がグラフになる。石もKも見えなくなってくる。健二の瞼はいつか、膠着してまばたきを忘れていく。
「僕は3年前にこっちに来てバカみたいに数学をした。向こうでヤツといる時もうっかり数学にうつつをぬかして怒られたものだ。こっちに来たらヤツがいないので僕はいよいよ数学をした」
Kがふと石を地面に落としたので、健二ははっと顔をあげた。するとKのまなざしがじっとこちらを捉えている。いつでも浮薄している彼の表情が、石膏のような静けさを孕んでいる。
「僕はでもふいに寂しくなってしまう」
Kはそう呟いて、うなだれた。そのうなだれ方が、健二の心臓付近にまで肉薄するくらやみになった。いや、健二の内側にあるくらやみを誘発した。
それで、その人はどうしたの。健二は聞いてみた。
「死んじゃった。神経症になって」
健二は自分の足元にあった小石を拾い上げた。少し湿気に蝕まれて黒ずんでいるそれ、を、池に向けて放った。放る時の筋肉には水切りの作用を表す数式がめぐっていた。石は跳ねることもなくぼちゃりと水面に吸い込まれた。Kがあざけるように笑う。
「へたくそ」
Kは落とした石を拾いなおして、健二と同じように池に投げ込んだ。さっきよりもしぶきをたてながら石は池に張られた水の中に落ちていった。水面が急に翳った。健二が見上げると薄汚れた雲が流されてきて、陽光を遮っていた。Kは健二に苦笑してみせた。
「へたくそだね、僕たちは」
健二は立ち尽くしてじっと水面をにらみつけている。しばらく切らないせいでぼうぼうとした癖のある前髪の下で、青白い影が密やかに健二の眉間周辺を覆っていた。

(夢を見た
どこか知らないけれど日本の河川敷だった
僕は土手を歩いている
高架の鉄骨に響く遠く電車の音遠くとおく
すき放題に生えた雑草がいくらでも僕の足首に絡み付いては千切られる
汚い川だった
がらくたが沢山打ち上げられている赤く錆びた色をしている
幅だけは広い川だった
その川の中途で引っかかっている君はぐったりとして動かない
息絶えて無為の質量と化した君を溺死させて浮腫ませるよごれた水
この川は僕だと分かる
分かっていた
轟(電車が高架をはしる)
轟轟(川を眺めていた川である僕)
はいつかレールの上に立っていた
轟轟轟轟轟

「数学だけあればいいってものじゃないいくら僕だってそんなことには耐えられない君が一番良く知っているだろうそりゃ僕は数学が好きだけれど数学はほんとうに美しいきれいだ考えていると時間の観念がなくなるような気がする時間の観念についてそういえば時間の観念とエントロピー並みにプロバビリティというものがありましたねエントロピーが表れる時は力学が無能になる時だっていうエントロピーなんていうと古典物理学ですけれど第二法則と定められている閉じた系の中で常に増大する閉じた系外界との交渉がない世界不可逆的な均一の世界の中で問うとわからない時間というものが浮き彫りにされる訳ですけれどボルツマンは物理的解釈をこの時間に加える業績を残したんだ無数の、無数の分子に対してこの概念を導入する人間の物理学に対する知恵外界と一切接触のない閉じた系で自由になる均一化される僕の存在違う、僕はそんなところじゃ生きていられるはずがない僕はこんなところで一人きりでいられないんだだから君以外の人間に触れても仕方がないだろう仕方がない君に帰着するから必ず、僕は可逆性の物質だ拡散しようが散逸しようが必ず君に帰着する光の圧力が幻想だっただろう?統計力学に逆らう僕を君は愚かだと思うか僕は愚かだと思う僕は結局閉じた系なんだ違う、違う違うこんなところじゃあ生きられない君がいない、君がいないからだ。数学はこんなにも美しいのにどうして僕はこんなにみすぼらしいのか知らないあの美しい世界に生きたいだけなのに僕の体はただ濁り腐った川になり無数のゴミを浮かせている、体があるからか、こころがあるからか君のせいなのか僕はただうつくしくなりたい。ここはどこだ。地球ではないようだ。僕は泥水になりながらいつか純然になることを夢見ている。その頃僕の中途に引っかかってしまった君は跡形もないだろうか。系のとり得る確立状態の小<大≒過去<未来≒君<孤独
(いやだ)



全て数の業

無心にプログラムを打ち込んでいたディスプレイの隅にアイコンがぼつりと穿たれたので、佳主馬は怪訝な顔をした。同時になり始めたアラーム音、アイコンが表示する名前の主にはっとしてマウスを握る。アイコンをクリックすると内蔵スピーカーからぶつぶつノイズが垂れた。
「健二さん?」
佳主馬は慌てて卓上ラジオのスイッチを落とした。付録のようなちゃちなつくりのラジオは、それでも今ネットワーク越しに話しかけてくれた人が作ってくれたものだ。佳主馬は窓際に向かうデスクに、小さなラジオから銀色のアンテナを伸ばして夜の気配に紛れる放送を拾うのがすきになっていた。
「…健二さん…?どうしたの、泣いているの?」
佳主馬はうろたえて、それでも何か出来るはずもないので彼の指先はただ虚空にさ迷う。
「なにかあった?…なにか言ってくれないと、わからないよ。どうしたの。誰かにいじめられた?さみしいの?だいじょうぶ?…健二さん、大丈夫?」
夕方から降り続く雨が止まずにいる。窓を叩いて流れ落ちていく雨音にかき消されそうな声を佳主馬は必死で聞きこぼすまいと、耳を潜める。神経が集中したせいで他のところに行き渡らなくなる。筋肉が緩む。寒い風が胸の底を吹き曝しにする。
「健二さん。帰ってきなよ。早く帰ってきて。そんなところで泣かないで。なんで、俺を置いてそんなところにいるんだ」
佳主馬は俯いて片手で顔を覆った。
「健二さん、さみしいよ」




僕の恋は芥だ」






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  1. 2010/09/23(木) 20:25:55|
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