炎如交際

キング×(数学+鼻血+保護区域)=世界平和 を提唱(したい)ブログです

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

【一寸先】


リーマンkzknパラレルです。
二人が同期という以外はあまり気にしないで書きました
細かい設定とか決まっていないので見逃してくだしあ…

最近なんかもうkzkn書きたくて書いているけど自分の技量に落ち込む日々ですねニコッ

通販については仕切りなおしでアナウンスさせていただきますのでしばしお待ちくださいすみません…


一寸先

こんな時間までやっているんだね、と健二は感心そうに言う。佳主馬は出されたおしぼりの包装を破りながら、彼といる自分にぼんやりとした違和感を今更ながらに覚えている。会社の中でも、働いているフロアは一緒ながら部署が違うのであまり喋ったりはしない。ただ自分は前々からこの男と話してみたいなぁという気が働いていた。それまで佳主馬の内だけに作用して機能するに至らなかった気持ちは、佳主馬が残業を終えて、ぼりぼりと凝った肩と首筋を伸ばすためにぐぅっと背をそらした拍子に、まだデスクに向かっている彼の茶色い後ろ頭を認めたからだ。身支度を整えた佳主馬は彼の隣の席に座り、仕事の進行具合を聞いた。彼は困惑した顔でもう帰りますとか細く言う。じゃあ飯でもいっしょに食わないかと誘った。彼は余計に戸惑いながら、白い指でキーを叩く。腹がすかないかと聞けば空きましたと言う。佳主馬は仕事の疲労が溜まり重たくなった頭を肘杖に支えながら、じゃあ何か食わないと、とか、なかば強引に彼を誘ってついには頷かせた。今思うと気だるい態度であれだけ執着じみたことがなんとなく気恥ずかしい感じだった。
彼らが会社を出たのは佳主馬が彼の隣へ腰掛けてから30分過ぎた頃だった。とりあえず駅に向かいながらまだ食べさせてくれるラーメン屋があるからそこにしようと佳主馬は言った。歩くだけで芯からほそぼそと冷たくなるような気温になり始めている。夜の薄暗さが指先に染み入る時期である。胃袋の中が軽いからなおさらだ。味が濃くて熱いものが食べたかった。連れは頷いた。どこへ誘っても均一の反応をしそうな、どうでも、という素っ気無い態度だった。けれども厭ではなさそうだった。
店内はそれでも先客がまばらにいた。二人は店の中の奥まったところにあるテーブルに通された。佳主馬は彼にメニューを渡した。全体的に色素の薄い青年はメニューに目を通しながら、池沢さんは何にするの、と聞いてきた。
「俺はもう決めてる。はじめてじゃないし、この店」
「じゃあ僕もあなたと同じもので」
「いいの?」
「特に嫌いなものもないし」
「味噌ラーメンにするんだけど」
「あぁ。池沢さん、名古屋だったっけ?いなか」
「そう(佳主馬は、彼が自分のくにを認識していたことに内心驚いた。生ぬるく湿り気がある驚きだった)。餃子も食わない?」
「僕はいい」
「じゃあとりあえず一人前頼む」
注文をすませて、引き換えに出された冷を飲む。目の前の男は所在なさそうに、ちゃいろの目玉で中空を眺めている。佳主馬はしばらくその行方を追い、自分がこんなに見るので彼が恐縮しているんじゃないかとはっと思い至り視線をずらした。
「仕事、残ってたの」
「いや、確認作業に時間食ってただけ」
「そう…そういえばこないだ聞いたけど、仕事が正確だって評判だね」
「いや」
それまで無頓着でただ人懐こい気配だけ纏っていたのが急に動揺した。
「…不安がするから。だから」
歯切れの悪さに佳主馬は理解しそびれる。一体深入りするべきなのか否か、と判じかねていたら料理が運ばれてきた。佳主馬はメガネを外してケースに仕舞った。湯気といっしょに調味料と脂のうまそうなにおいがふぅっと鼻腔を満たし胃の内側がぎゅるぎゅるする。佳主馬は向かいの人に割り箸を取ってやって、自分も箸を割った。
「小磯、小皿ちょうだい」
「あ、ありがとう」
酢醤油をつくりラー油を垂らして、小磯の方へ渡しながら、餃子も適当に摘んでくれな、と注意する。小皿を受け取りながら小磯は、ちょっとはにかんだように笑った。男のくせに妙な表情をするな、と思った。
しばらく麺を啜る音が二人の間に交わされる。もちもちした麺を咀嚼しながらちらと窺えば、それなりに没頭しながら食事をしている様だったから少し安心した。何しろ彼は同年代の男にしたらひどく細く頼りない体型をしている。佳主馬は自身の意識が彼の体型から食生活にまで推測を及ばせている不自然にはまだ気がつかずにいる。
「…不安がする、って?」
小磯は佳主馬のふいの問いかけに、レンゲをなかば口に突っ込んだままぼうっとしたが、あぁ、さっきの話?と言う。
「データの管理。数字がたくさんじゃない。間違いがあったらいけないから」
「そりゃそうだけど…まさか全部の計算を確認してる訳じゃないだろ?」
小磯は例の微笑を浮かべる。佳主馬は麺を挟んだままの箸の動きを止めて、ぽつんと寂しそうな彼に見入る。
「機械が計算ちがいするはずはないけれどね。でも、やっぱり一回は生きた頭で計算しなくちゃ…自分の頭で考えて見なくちゃいけないような気がするもんで」
「そんなことやってたら仕事が終わるはずないだろ」
「んーでもやらないとのどに小骨が刺さったみたいな、強迫観念じゃないけれど…変だろ」
「別に、変とか…まぁ変だと思うけど」
小磯はメンマのひとつを摘み上げて、ぽりぽり噛む。
「…高校生の時に数学オリンピックってのに挑戦したことがあってね」
「は?」
思いがけない上に聞き覚えのない単語を言われて、思わず佳主馬は怪訝を露にする。小磯は少し小さくなりながら、ぱちぱちとせわしなく瞬きをした。瞼が開く度に茶色い瞳があちこちをさまよっている。
「すごくつまらないミスをして、代表になりそこねたんだ」
「…はー……そのせいで?確認しないと不安だって?」
「ん…きっかけ…というか…自分の評価が数学と直結しているステージだったから…意識が、ダブってたのかな」
「なにと?」
「計算を間違えるっていうのは怖いことだ」
「……はぁ」
「決してしたらいけないことだ。どの過程であれ、数学の構造っていうのは、ちょっとでも狂ったらそれで意味をなくす。例えばもし計算が完璧でも構成が間違っていたらどうしようもないし。計算だって。数は無限に小さくなりながら絶対に消えうせない。そのすべてを拾い上げて完成させなくちゃいけない。僕は間違えることに怯えているんだよ、ずっと。たぶん死ぬまで」
「………」
「っていう、気持ちと、結局間違えて台無しにしちゃって代表になるチャンスを逃したっていうショックが二重になって、もう二度と間違えるものかって、思って」
「………」
「結局、今でもちょいちょい間違えたりはしているんだけどね」
確認をすれば間違いは正せるので。と締めくくった唇は、レンゲの上に乗せたきれぎれの麺をスープと一緒に啜り込む。佳主馬は餃子を口に運びながら、返事の言葉選びに困った。そのうち返事をしないでもいいのかと思いついて、冷を口に含んで水を口腔に転がした。
ふと気がついて佳主馬が顔を上げると、小磯がこちらをじっと見つめていた。
「…何、なんか顔についてる?」
怪訝に問うでも、小磯はどこかから魂を流露させるような呆然とした視線で佳主馬の顔を眺めているだけだ。
「いや、池沢さんが眼鏡はずしているところを見るのが珍しいので」
「…あぁ…曇るもの」
「本当にきれい」
「…は?」
「僕、きれいな顔があるとついつい見入ってしまうんだよねぇ」
小磯は真顔でそう呟くと、ひとつもらうね、と言って餃子を箸で摘もうとして、つるりと箸先から滑らせる。
「アッ、もう」
別に動揺のあらわれではなく単なる不器用のようだった。なんとか突き刺す無作法はしまいと懸命に箸を使う小磯の眉間に、むずがる皺が寄る。
佳主馬は入社してから覚えていた妙な感覚のことを思い出していた。日に何度かどこからか漂うような気配が自分にまつわりつくのを感じ、途絶えるでもなく毎日続いていたその正体がもしや視線ではないだろうかと思い至り、出所を探ってみる気になった。けれど結局意味を含んだ目の主を見つけられず仕舞いだった。そもそも今の今まで経緯を忘れていた。ある頃から、むしろ、自分の視線が追いかける側に回っていて、意識はずるずると引っ張られ這いずっていたせいだ。
「……きれいって」
佳主馬は無論同性にそんなことを言われたのは初めてだった。むしろ目つきが悪くて険のある顔立ちだと評される方が多くて、自分自身、切れ長で一重の三白眼のことが気に入らないでいる。
「……あ、あんまり言われないけど、そんなこと…」
「?別に誰がどう言うのだかは知らないけれど、僕は今まで見た中で池沢さんの顔が一番きれいだと思うなぁ。だからたまに見かけると、つい見てしまうんだよね」
佳主馬は自分の手から箸が転がり落ちていることにいまさら気づいて、慌ててお絞りに手を伸ばした。畳んでいたそれを握ると、出された時には熱いくらいだったのが温い湿り気に変わっていた。
佳主馬は通りがかった女性の店員に声をかけて、瓶ビール、と注文した。
「小磯飲む?飲むよな」
「え?はい」
「グラス、二つ」
「でももうおなかいっぱいだからそんなに飲めないよ」
眉を下げて困ったように微笑する小磯は、それでも厭そうではなかった。佳主馬は箸を握りなおして、殆ど麺も具もなくなってしまった丼のスープの底を浚いだした。

結局小磯が小さなグラスに半分くらいしか飲まなかったので、中瓶の殆どを佳主馬が干した。腹がくちいところに炭酸のアルコールをたらふく入れたので、鍛えている腹筋の内側が破裂しそうに張り詰めている。不快感を覚えながら、それでも小磯と並んで歩く夜の街は、人通り少なくしずかで、陽のないくらい風は冷たくて心地良かった。小さな改札口の蛍光灯の一つが切れ掛かりながら微弱な明滅を繰り返す。具合がやけに視界に堪えたのは、少しばかり酔ってしまったせいだろうか。
「小磯はどっち方面?」
「品川」
「じゃあ一緒だ」
「そうなんだ。でも、朝、見かけたことがないなぁ」
「いっつも小磯が遅刻ぎりぎりだからだろ」
「あ、はは…そうか」
電車はすぐに来た。車内は割合空いていたので、二人は並んで硬いシートに腰掛けた。余裕があるのに小磯はきちりと膝を揃えて座り、背中を丸めて鞄にもたれている。物憂げな様子を見下ろして、佳主馬は大また広げて座っていたのをちょっと正す。
「疲れた?」
「疲れるよねー、日々」
躯体が緩慢に動き出す。レールを走る振動が骨身に染み入る。向かい側には誰も座っていない。ガラスが映す自分らの姿に、佳主馬はラーメン屋で感じていた違和感をより一層の濃度でかみ締めている。
幽霊じみた車掌のアナウンスに入り混じらせれば、少しはごまかせるかもしれないと佳主馬はこすい事を考えた。
「…小磯さ。数学が好きなら、どうしてそっちの道には行かなかったんだ」
小磯の方は見ずに言う。ただ、ガラスに写し取られた彼の影がちょっと傾いだので、佳主馬はすぐさまごめんと言った。
「立ち入った事を聞いた」
思わず小磯の方を見ると、小磯も佳主馬の方に顔を向けて、微笑しながら首を横に振る。さっきまで希薄だった彼の表情がふいに差し迫ってきた。風の加減で花のにおいが鼻腔まで届いたみたいな感じだった。佳主馬は彼から視線を外して俯いた。
「……あとお前そのスーツサイズ合ってないぞ」
「あ、ばれた?」
「肩とか。スカスカしてるじゃないか」
「んー、足らない方向で規格外の体型なんだけど直したりが面倒で」
「細身がさらに華奢に見えるからだらしない」
「別に気にしないからいい」
その点池沢さんは上背あるしシッカリした体格で羨ましい、体は鍛えてるから、とかなんとか会話をしていたら小磯の乗換駅に着いた。小磯は立ち上がる時に、車体の揺らぎに足を少しもつれさせた。佳主馬は思わず腕を伸ばしかけたが、彼の腰周りがあまりに脆弱そうで、はっと腕を引き戻した。幸い小磯は倒れたりはしなかった。
「じゃあ、また明日」
「あぁ」
小磯は簡単に片手を振ると、電車から降りていく。茶色い頭を眺めている内にドアが閉まる、嵌め殺し越しには駅の風景がくすんでいるだけで再び走り出した電車のために佳主馬の視界から健二は完全に消える。運ばれていく自分と駅の改札を抜けていく健二とが点と点になりその距離がずるずるに引き延ばされていく。佳主馬の眺める窓にはもう自分一人が薄ら寒く座っている姿しかない。それでも隣に男の名残があるような気がする。実際小磯の存在は佳主馬にとって幻影に近い意味を与えている。傍にいたのだかいるのだかいないのだかわからない。癖に、佳主馬の精神付近を漂う。剥がれ落ちようとしないくせにあやふやで、捉えどころのない人の気配。
少し酔っている。酔狂が滲むのはおそらくは小磯のせいだったけれど。
佳主馬は次の駅で降りた。小さな駅だった。沿線に目立った施設も店舗もなくて、プラットホームの外側はじっとりとした暗闇で閉じている。電光掲示板を見上げると、反対方向へ行く電車が来るのにあと15分もあった。佳主馬は肩を落として陰鬱に、自分のバカさ加減を恥じた。もう22時をとうに過ぎている。家に着くのは24時近くなってしまうかもしれない。急に疲労が手足を重たくし始めたので、辟易しながら、細長いプラットーホームの先端間際、最後尾の車両の乗車口と思われるあたりに設置されたベンチを目指して歩き出す。
古びた時刻表の隣に産婦人科の広告が並んでいた。こどものイラストとゴシック体で書かれた病院名と連絡先の下に鏡が備え付けてある。佳主馬は足を止めて、縁が錆びかけている鏡の表面に見慣れた自分の顔を認める。そうして眼鏡を外して、数十秒の間じっと自分の素顔を眺めた。目が悪いので細めているのを取り除いたとしても、やっぱり三白眼が気に食わなかった。

一週間後、どれだけ早くに時間をずらしてみてもなかなか池沢さんに会えないと不思議そうにする小磯に、佳主馬は億劫な気分で相対しなければなかなかった。



スポンサーサイト
  1. 2010/10/03(日) 22:44:19|
  2. 【一寸先】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<スパークのおはなし | ホーム | !おしらせ!>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://hihihitohito777.blog84.fc2.com/tb.php/256-15aaf04f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

profile

人見五郎

Author:人見五郎
地球規模でキングの発育を促進したいヲタですよろしくおねg(ry

夏戦争サイト様のみリンクフリーです。
http://hihihitohito777.blog84.fc2.com/

バナーアドレス↓
http://blog-imgs-29.fc2.com/h/i/h/hihihitohito777/bana1.gif

Category

【】の中にカズケンSS ↑NEW

はじめに (1)
★リクエスト企画★ (5)
【鬼はたちぎえ】 (1)
【一寸先】 (1)
【おにいちゃんの骨】 (1)
【芥】 (1)
【どうしのことわり】 (1)
【夏間際に】 (1)
【ちったいかずくん】 (5)
【ゆとりきょういく一万光年】 (1)
!knkzです!【びらん】R18 (3)
【手管の花束】 (1)
【つやとかげ】 (1)
【センチメンタルフィボナッチレスポンス不足のマスター】 (1)
【ランナーズ・ハイ】 (2)
【よすが】!ケンカズ! (1)
【た(い)がいちがい】 (2)
【師走を緩和】 (1)
【スロースターター(ex:廃棄処分の過程)】 (1)
【ささやかなる無縁を切り開く悪意の名を】 (1)
【ご奉仕価格破壊】 (1)
【もってけどろぼう】 (1)
【Causation】明治時代パロ (3)
【トリック・リサイクル】 (4)
【メーテー尽くし今宵のどろり】 (3)
【しれつ】 (3)
【K-effect=(y(”乱数表の顛末”))≧(26280+α) ul02/min/cm c/sec】 (1)
【まだ残酷は知らない】 (1)
【乱数表の顛末】 (1)
【のどから】 (4)
にちじょう (123)
らくがき (6)
小ネタ (17)
拍手レス (31)
オフ (30)
未分類 (1)
【通販のこと】 (5)

new

bkm


かす…かには9杯でいい様

イグニス…菅谷様

FloretDoll…朝雨様

1から0まで…更科様

食べかけロマンス…三太様

納戸…友田様

HELVETICA…弓月凛様

tennen@SW分室…ホズミ様

ギャフン!…イカニコミ様

ELL…榊様

日付変更線の彼方へ…kai様

萌ゆ月…犬神かづき様

物置夏角…秋人様

なつかけ…りう様

shu-shu…榎本様

夏の日は、さようなら。…スナ様

杣人綴…そま様

RH…ユヅ様

n+…ぼん様(SW他星矢etcよろず)

鉄片…片井様

ペチカ…佐竹ガム様

1221…加賀三文字様

i am robot…コダ様

少年!…ちんチラ子様

archive

link

count

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。